※写真はイメージです。

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友人が長年フラメンコを習っており、時々その教室の発表会にお誘いがあります。

この度、その教室が主催する本格的なフラメンコのイベントを観てきました。スペインから来たプロの男女のダンサーと歌い手、専属のギタリスト、そして教室の上級クラスの生徒さんが、踊り歌い続けてあっという間の1時間30分でした。

20年ほど前、ある楽器店の中で聴こえてくる音楽に一瞬聴き入りました。それはCDデビューしたばかりの「ジプシーキングス」というグループでした。甘く切ない旋律と歌声は、私のメンタリティに合ったのか心を捉えて離しません。その場でCDを買ってしまいました。アルバムの全ての曲に漂うジプシーの哀愁と独特のリズムは、何回聴いても飽きることはなく、これまで折を見ては聴いていました。一時期テレビのCMによく使用されていましたし、最近は「マイウェイ」という曲がコーヒーのCMのバックグラウンドに使われています。以前放送されていた、人情話が色濃い「鬼平犯科帳」には、「インスピレーション」という曲が使われていました。この番組は、いつもやるせない悲しい結末を迎えてドラマが終わりますので、エンディングに哀愁を帯びたこの曲が静かに流れてきますと、さらにやるせない思いが深くなっていくのです。何故か時代劇の悲しい人情話の結末に、ジプシーの音楽はぴったりでした。

ジプシーの音楽とフラメンコは、移動民族であったロマ族によって生まれたようです。フラメンコは、カンテ(歌)から始まり、それに合わせてバイレ(踊り)がつき、トケ(ギター)が加わり、現在に至ります。この3つがそろって成り立つ芸術であり、人生の怒りや苦しみ、悲哀、また恋への情熱、生きる喜びを表現しています。

会場で聴いた歌い手の声と歌い方、旋律、ギターの演奏、パーカッションのリズムは、まさにジプシーキングスの音楽です。

その音楽と、赤や緑の薄暗い照明の中で躍動するダンサーの踊りは、妖艶そのものでした。その妖しさは、男女間の求愛や恋への思い憧れを想像させます。

理性的、客観的に接するクラシック音楽とは違い、フラメンコは、踊り手や歌に自分自身を投影し、情緒的に主観的に楽しむ音楽のような気がします。心身を開放して、しっかりとストレスを解消してきました。