音楽の素養はほとんどありません。学んだのは中学校の音楽の授業のみ、楽器も何1つ弾けません。ただ、学生時代から好きなオーディオを通して、多様な音楽に触れていましたし、たまたま入った楽器メーカーの仕事環境も、音楽に溢れていました。現在も、クラシック音楽に関わる仕事をしていますので、音楽を聴いてきた回数は自慢できるかもしれません。
しかしながら、音楽の専門用語や知識を、ほとんど持ち合わせていませんので、良い演奏を聴いても、その感動を的確な言葉や文章で表現することが出来ません。これはちょっとした悩みなのです。

シュトイデ・ヴァイオリンリサイタル

シュトイデ・ヴァイオリンリサイタル

先日、ウィーンフィルのコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデ・ヴァイオリンリサイタルを聴いてきました。いつもさらっと聴き流している小職にとっては、1曲目のモーツァルトのソナタから少々窮屈さを覚えてしまいました。深い精神性、音の緻密さ、格調の高い精緻な演奏に心身がついていけないのです。これではだめだと、2曲目のブラームスのソナタからは姿勢を正し、緊張感をもって演奏と対峙しますと、窮屈さが消えて心に響いてくるものがあります。
後半1曲目の、バッハの無伴奏ソナタ・アダージョとフーガの演奏は素晴らしかったです。教会で神様にお祈りを捧げている、敬虔な信者のような気持ちになり、他に言葉を知りませんので敢えて書きますが、「音楽に神様が宿っている」という感じがしました。
ヴァイオリンリサイタル、そして曲目も派手ではありませんので、満席には遠い状況でしたが、このような演奏会にお越しになるお客様は、きっと音楽に詳しいのでしょう。会場は物音も騒めきも無く、静かな緊張感の中でシュトイデ氏の演奏に耳を傾けていました。
著名な演奏家に対してお客様は期待しますし、演奏は良くて当たり前です。シュトイデ氏は、一般的にそれほど著名ではありませんが、知る人ぞ知る演奏家、このような演奏会で思わぬ「お宝」と出会うことがあり、幸運なお客様は、本当に来て良かったと感動に包まれて家路につかれます。
今回の伴奏用のピアノは、ウィーンが生み出した名品、ベーゼンドルファーでした。ウィーンとご縁が深い、伴奏者の三輪 郁さんがご指名されたようです。アクロスシンフォニーホールで、久し振りにベーゼンドルファーの音を聴くことが出来ました。