オーナーの名前が「浩敏」音読みにして「コービン」。この喫茶店の名前の由来です。
この地区の再開発が決まり、そのタイミングに合わせて12月末に閉店することが決まりました。開業して40年。その当時は喫茶店で「モーニングセットやランチを食べ、コーヒーや紅茶を嗜み、友と語らう」という生活スタイルが若者やサラリーマンに定着しつつありました。コービンは小さな喫茶店ですが多くのお客様が集い、素敵なオーナー夫婦を通してお客様との出会いや交流があり、いろいろな人生が交錯する場所でありました。時代の変化、流れの中でそのような「喫茶店」が徐々に消えていきましたが、「コービン」は競争が激しい天神町という場所で孤軍奮闘、昔のスタイルを変えずに長い間頑張り続けてきました。
先日、この店に通ったお客様の有志が発起人となり、この喫茶店に感謝の気持ちを表す為に西鉄グランドホテルでパーティが開催されました。出席者は多士済々、地元を中心に東京など遠方から135名の人々が一堂に会しました。パーティが始まりそれなりの雰囲気をお持ちの老紳士が、「いろいろなパーティに出席してきたが、閉店する喫茶店の為にこのような立派な場所で、しかもこれだけ多くの出席者が集まっていることに驚きを隠せない。」とスピーチされました。
確かに天神の路地に潜めく小さな喫茶店ですが、しかし長年お客様を惹きつけてきたのです。
オーナーはYES、NOがはっきりした、人の意見を聞かない頑固者ですが、頭脳明晰、舌鋒鋭くて弁舌爽やか、読書家で博識、スポーツはスキューバーダイビング、スキー、ゴルフ、特に賭け事はめっぽう強く麻雀、パチンコ、競馬、競艇となんでもござれ、腕前はどれも一級品です。小職は麻雀して一度も勝った記憶がありません。多才多趣味のマスターの人柄に魅かれて通ったお客様は多く、今でも福岡を離れたお客様との親交も長く続いているようです。
小職はマスターが挽くコーヒーに出会ってコーヒーの美味しさを知りました。
そのマスターの上を行くのが奥様。60歳を過ぎたマスターはさすがに老いを隠せませんが、奥様は以前岩田屋デパートが出している雑誌のモデルをされていたほどの美しさ、それに知性と優しさを兼ね備えています。今でもご様子はお変わりなく、奥様がお店に立たれると店内の雰囲気が一変します。奥様がつくるケーキがまた絶品、これまで何回もテレビや雑誌から取材を受けています。それほど甘くなく上品な風味はまさに大人の美味しさです。また料理教室を主宰されるほどの料理の達人でもあります。店内での二人の仕事のコンビネーションは絶妙、我儘なマスターをさりげなく支えている奥様の姿には感心しておりました。
昔のジャズ喫茶には人々が集いジャズを聴きながら語り合うという独特の文化、世界観が存在しました。当時の喫茶店もそれに近い文化があり、人々が無為に時間を過ごし語らうという場所であったように思います。その文化を唯一持ち続けきたのが「コービン」という喫茶店でした。お客様にとって「コービン」はこの夫婦が作り上げた天神のオアシスでした。
12月29日にその文化が消えることになります。
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