ここ20年間、大きな震災が続いています。阪神淡路大震災、福岡西方沖地震を体験した小職はまたもや熊本の大地震に遭遇してしまいました。東日本大震災の衝撃度が余りに大きかった為、小職の震災体験はどこか彼方に行ってしまいましたが、今回の熊本の地震の大きな揺れが阪神大震災の記憶を呼び戻しました。
阪神淡路大震災のその瞬間、インフラが崩壊し移動手段も全て止まってしまいましたのでラジオが唯一の情報手段でした。ラジオは情報量が限られている為、被災者はテレビが復旧するまで被災の全容が分かりませんでした。初めて知るその被害の大きさに愕然としました。1日中テレビはこれでもかと現場の状況を全国へ伝え続けましたが、どのテレビの報道も同じ内容、画面は被災が激しいところがばかり、被災者の悲しみに追い打ちをかけるような決まりきった質問、被災者も疲れ切った中で返事を強要されているように見えて、テレビの画面に少々辟易していました。使命感はあるもののテレビ側は所詮仕事です。被災者側になれませんし被災者の気持ちにずっと寄り添うことも出来ません。現場の正確な情報を伝えるという姿勢だけで十分ではないかなと思っていました。
今回、熊本でも被災者の心情を逆なでするようなマスコミ関係書の傍若無人ぶりが目立つようです。
仕事としてインパクトのあるニュースや情報に絞って報道せざるを得ないのでしょうが、もう十分に情報は伝わっていますので、被災者の気持ちに土足で入ることはせず、遠くから優しく見守ることも必要ではないかと元被災者として思う日々です。
今回、1回目の前震の時は規模の割には被害が小さいと思っていましたが、2回目の本震が被害を大きくしました。被災者の方は本当に大変だろうと思いますが、震災経験者として唯一救いだった体験があります。辛い悲しい境遇の方がたくさんいますとこれまで近隣に無関心だった人々が寄り添い心を開き、優しい気持ちと強い連帯感が生まれたのです。地震が無ければあり得ない人々の心の交流です。そして家や家族や仕事等を一瞬にして失った人間の強さを見てきました。言い方を変えれば平和な日常という重いものを背負って生きていた人達が異常な状況の中で身軽になった訳です。開き直り、やるしかありません。そこには未来を見つめる目の輝きがあり溢れるエネルギーがありました。
壊滅的な被害を受け自力では立ち直れない人々には救いの手が必要です。しかし震災に立ち向かっている元気な人々がたくさんいるはずです。きっと彼らが熊本を復興させてくれることでしょう。マスコミも前向きな応援をして欲しいと思います。